最近白山に登っていると、テント泊装備の登山者をたくさん見かけるようになりました。白山登山はほぼ日帰りの私も、白山でテント泊ってどんな感じ?という興味がフツフツ。そこで、実際にテントを張って白山を歩いてみることにしました。せっかくなので、いつもとはちょっと違った白山を感じようと、御前峰の頂上には向かわず、四塚山まで足を延ばしてみることに。そこで目にした景色とは?
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テント泊登山の魅力とは?

「どうして重い荷物を担いでまで、山でテントを張りたいの?」と聞かれたら、「はい、その通り」と答えるかもしれません。衣食住を詰め込んだザックを背負って山を歩くのは、やはり苦行のようなもの。でも、山の中で非日常の世界を目にすると、しんどかったこともひっくるめて「充実感」や「達成感」という感情に早変わり。そして、テント泊の沼に嵌まって行く人が多いのだと思います。
山小屋泊とテント泊の違い
早速テントを担いで山へ!と言いたいところですが、初心者がいきなりテント泊登山というのはハードルが高いので、まずは山小屋泊を経験し、徐々にステップアップすることをおすすめします。双方の主な違いを挙げてみたので、参考にして下さい。
小屋泊 | テント泊 | |
荷物や装備 | テント泊よりも軽い | 重い(テント・寝具・食料・調理道具など) |
費用 | 高い(一般的には一泊二食10,000~16,000円程度、南竜山荘は13,000円) | 安い(一般的には無料~4,000円程度、南竜ヶ馬場野営場は1,000円) |
予約の有無 | 要予約が多く、予約争奪戦も激しい (南竜山荘は要予約) | 予約不要が多いが、要予約もあり (南竜ヶ馬場野営場は予約不要) |
快適さ | 荒天でもほぼ快適に過ごせる | 天候にかなり左右される |
自由度 | 時間などの決まり事がある | 自分の計画で行動できる |
実際に白山でテント泊してみた!
白山登山で利用できるテント場の中で、最も一般的なのが南竜ヶ馬場野営場です。8月上旬、この場所で実際にテント泊を決行してみました。

テント装備を背負って、いざ出発! この日の行程は、砂防新道を利用して南竜ヶ馬場野営場までと短めなので、ちょっと遅めのお昼過ぎに出発。ガス多めですが、涼しくてよかった!

中飯場と甚之助避難小屋で休憩をはさみながら、ひたすら登ります。南竜分岐で右に曲がってしばらくすると、目的地の南竜ヶ馬場が見えてきました。アルプスの少女ハイジような世界が広がります。

15時半頃、南竜ヶ馬場に到着。奥は山小屋の南竜山荘、手前がテント場受付があるセントラルロッジです。

テント受付は無人でした。受付表を記入し、受付表と料金を封筒の中に入れ、受付ボックスに入れるシステム。料金は1人千円、安っ!

受付から5分ほどで本日の目的地、野営場に到着。さすがオンシーズン、先客でいっぱいです。

テントは手前の方から埋まっているので、奥へ進むとケビンが見えてきました。お花に囲まれたケビンでお泊まりするのも魅力的だなぁ。

ケビンから少し下りたところに、誰もいない平地が。ここにテント張っていいのかなぁと思いつつ、しれーっと設営しちゃいました。本日の我が家は、広々としたお庭付き。お花もちらほら咲いています。

トイレへ向かうと、おぉ、めっちゃきれい!そして水洗‼ 山のキャンプ場ではあり得ない清潔感です。これはポイント超高いですね。隣にある炊事舎も広くてきれいで、使いやすそうでした。

野営場近くにはこんな川も流れています。キンキンに冷えた水で足だけ浸してクールダウン。その後、売店でビールを買ってテントに戻ります。

ちょっと早めの晩御飯。この日のメニューは、レトルトの鶏肉炭火焼き、アルファ米のご飯、自家製ピクルスなどなど。ビールとおつまみも頂きながら、至福のひと時の始まりです!

食後は、売店の方が教えてくれた景色がきれいなスポット、南竜庭園までお散歩タイム。

チングルマの綿毛がふわふわと揺れて、とても長閑な場所でした。次はお花の時期に来よう!

日没が近づいてくると、夕陽が見える場所を求めて人々が大移動。この日はきれいな夕陽に加え、絶品の雲海も見ることができました。山でお泊まりした人だけが見ることのできる感動の景色。来てよかった!と、心から思いました。

黄昏時のお散歩の後、テントに戻るとかわいいお花たちから熱視線が。「お疲れ様」と言ってくれているようで、キュンとしました。

真夜中に目が覚め、テントのファスナーをシュッと開けただけでこの星空。これぞ、テント泊の醍醐味です! スマホで撮ってこれなので、実際はもっとドラマチック。またまた、来てよかった!

翌朝、アルプス展望台で日の出を見ようと、まだ真っ暗な朝4時に出発。夜露に濡れたテントや大きい荷物はそのまま置いて行きますが、防犯のためしっかり施錠して出かけます。1時間足らずで目的地に到着し、朝ご飯を頬張りながら日の出待ち。東雲の空のグラデーションが美し過ぎました。この時間の空の色が一番好き!

5時頃、北アルプス方向からお日様が出てきました。神々しい日の出も、お泊まりした人だけの特権。くどいようですが、ホント来てよかった! 夕陽・星空・ご来光の「山でお泊まり絶景3点セット」コンプリート!

日の出を見た後は、この日の目的地、四塚山へ向かいます。身軽な朝の山歩きは、清々しいこと、この上なし!

寝起きの別山も相変わらずイケメンです。今度はあっちに登るのもいいなぁ。南竜ヶ馬場にテントを張れば、別山への厳しい道のりも、少しは楽になります。

朝露を纏ったフレッシュなクロユリがキラキラ。もうルンルンです!

山頂には登らず室堂平を横切ると、ハクサンコザクラが満開! 通る人みんなが見惚れていました。

大汝峰の巻き道を通って七倉山の分岐まで来ました。遠くに見えるのが七倉山? 四塚山? よく分からないけど、進むのみ!

一旦下ると御手水鉢。ここからの登りですれ違った女性は、七倉の辻で引き返してきたのだとか。その先は厳しいのかな?と悩みつつ進みます。でも、七倉の辻で休憩していた男性から「四塚山のお花畑はすごかった」と聞き、俄然やる気が出てきました。

四塚山へ向かって進んで行くと、足元に白いお花が。見上げればハクサンイチゲのお花畑、その向こうにケルンが見えました。四塚山です! 塚(ケルン)が4つあるから四塚山なのだとか。

ケルンの向こう側には、バッチリ見頃のチングルマが群生。ハクサンコザクラもたくさん咲いていました。七倉の辻で出会った男性の言っていた通り、素晴らしいお花畑! ここまで来て本当によかった‼ 初めて目にした景色を思いっきり満喫した後は、後ろ髪をひかれつつ下山です。

戻る途中で後ろを振り返ると、細く続く道が。あそこをずっと歩いて来たんだなぁと、感慨深くなりながら室堂へ戻ります。午後から雨予報が出ていたので、先を急がねば。

室堂から南竜ヶ馬場までは、最短距離の鳶岩コースをチョイス。テント場ですっかり乾いたテントを回収して、下山の途に着きました。
テント泊におすすめの服装ガイド


行動中は熱を逃しやすい服装が基本ですが、日焼け対策は念入りに(左)。重い荷物を背負う場合の登山靴は、安定性が高くてしっかりしたものがいいと思います。テント場に着いたら、逆に保温性のある服に着替え、気温の低下とともに重ね着します(右)。テント場ではさっと履けるサンダルが重宝します。
テント泊に必要な持ち物リスト

今回の持ち物をずらーっと並べてみました。ザックをちょっと小さめにして、なるべく軽く!を心がけたので、総重量は約9kgに抑えることに成功。衣食住に分けてリスト化すると、こんな感じです。
『衣』関連 | □ フリース □ 長袖シャツ(メリノウール素材) □ 長袖Tシャツ(メリノウール素材) □ 長ズボン | □ ウィンドシェル □ 靴下・下着の着替え □ レインウェア □ サンダル |
『食』関連 | □ アルファ米×2 □ レトルトの鶏肉 □ 漬物など野菜 □ パン×2 □ お菓子などの行動食 □ ゼリー×2 | □ スポーツドリンク500㎖ □ 水500㎖ □ パウダー状ドリンク □ 鍋(蓋がフライパン) □ ガス・コンロ・ライター □ スプーン・割り箸・ナイフ |
『住』関連 その他 | □ テント □ マット □ シュラフ □ 椅子 □ テーブル □ ランタン □ ヘッドランプ □ 充電器 □ 充電コード □ 替え電池 □ 救急セット □ 携帯トイレ □ アルミシート | □ 使い捨てカイロ □ 裁縫セット □ 結束バンド □ 日焼け止め・化粧品 □ 除菌スプレー □ 虫よけスプレー・蚊取り線香 □ 冷却スプレー □ 体拭きシート □ ドライシャンプー □ 歯ブラシ・歯みがき □ ゴミ袋数枚 □ ザック(35ℓ) □ ストック |
今回の持ち物で特に気を付けた点は、次の4点です。
防寒着 | 猛暑なのとテント場の標高がそれほど高くないので、ダウンジャケットは持たず、保温性の高いシャツやフリースを持参。就寝時はダウンのシュラフをしっかりと使用。 |
水分 | 水分は1ℓだけ持参し、道中の水場で随時補給。粉状のスポーツドリンクの素で、スポーツドリンクを作った。 |
食料 | 2食分と行動食やおやつを持参。不足分は売店で購入予定だったが、購入したのはビールのみ。鶏肉は冷凍状態で持参したが、夜にはいい具合に解凍されていた。 |
夏の対策グッズ | 虫よけや日焼け止め、冷却スプレーなど、夏ならではの対策も必要。ただ今回は、虫よけグッズは不使用だった。 |
テント泊の注意点
楽しそうに思えるテント泊ですが、デメリットがあることもお忘れなく。双方ともに考慮して、身の丈に合ったスタイルを見つけてみましょう。
●テント泊のメリット | ●テント泊のデメリット |
・大自然を肌で感じられる ・自由度の高さ・自分のペースで過ごせる ・プライベートな空間が保たれる ・アウトドアスキルが向上する ・宿泊費が安い | ・荷物が重い ・気象条件に大きく左右される ・基本的には全て自己完結 ・装備を揃えると高額になる |
まとめ|白山テント泊で得られる特別な体験

幕一枚隔てた向こう側には、心が震えるほどの絶景が広がるテント泊登山。大自然の中を思うままに歩き、かけがえのない体験ができる『自己完結型』のアクティビティですが、一歩間違えれば危険が伴うことも。なので、様々なリスクに対応できるアウトドアスキルを身に着けた上で、テント泊登山の第一歩を踏み出してほしいと思います。そして、南龍ヶ馬場野営場は快適過ぎました。ここを起点に、奥深き白山をまた歩いてみたいと思いました。

今回は白山の山頂へは向かいませんでしたが、山頂や御前峰への景色が気になる方は、以下の関連リンクも併せてご覧ください。
※白山は国立公園内にあるので、テントの設営は指定された場所で行うようにしましょう。また、テント場の最新状況や安全を確認の上、出かけるようにしましょう。
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