『花の百名山』である白山は、高山植物の宝庫としても有名です。特に7~8月にかけてはお花のベストシーズン! 県内外や海外からも登山者が多く訪れるほど大人気です。今回は、白山で見ることのできる高山植物と、お花の群生地を見頃・難易度別にご紹介。初心者から健脚者まで、白山のお花を楽しめるスポットをお教えします。そして、お花の多い観光新道を実際に登ってみたら…。さあ、心躍るお花畑へ、Let’s go!
INDEX
白山は高山植物の宝庫!


白山の高山植物の魅力は、多種多様な植物が見られること。ハクサンイチゲやハクサンフウロ、ハクサンコザクラなど「ハクサン」の名を冠したお花はもちろん、様々なお花がひしめき合いながら咲き誇っている姿が見られます。きつい山道を汗だくになって登ってきた登山者も、このお花畑を見ると「登ってきてよかったー!」と思うほど。白山の高山植物にはそんな引力があるのです。
難易度別!高山植物おすすめスポット5選
そんな白山の中でも、特に高山植物が多く見られるおすすめスポットを、難易度別にご紹介。白山の麓でお花を楽しめるハイキングコースから、御前ヶ峰の奥にある花園まで、お花と戯れたい人必見のコースばかりです。標高や植生によって見頃も違うので、時期をずらしながらたくさんのお花に出会ってみてはいかが?
① 岩屋俣谷探勝路:初心者向け(5~6月頃)



白山に登る体力がない人でも、白山を間近に感じられる3~4km程度の周回コースです。白山登山口の市ノ瀬を起点としているので登山者気分も味わえるし、展望台から見える白山に想いを馳せることもできます。幸せを呼ぶ緑のニリンソウや、しっとりとした日にしか見られないスケルトンのサンカヨウを探すのも面白いかも。標高が低めなので、5月頃からお花探しハイキングを楽しむことができそうです。
② 観光新道:中級者向け(7月中旬~下旬)


一般的な白山登山は、別当出合から吊橋を渡る砂防新道を歩く方が多いですが、お花好きの人はぜひ観光新道を歩いてみましょう。「馬のたてがみ」付近には、ニッコウキスゲで黄色に覆われた斜面や、タカネマツムシソウやシモツケソウなどがひしめき合うように咲くお花畑が。誰もが足を止め、振り返り、シャッターを押す「映えスポット」でもあります。
③ エコーライン:中級者向け(7月中旬~下旬頃)

砂防新道の南竜分岐から南竜ヶ馬場方向に少し進んだところにあるエコーラインも、お花で有名な登山道。チングルマの群落やニッコウキスゲ、クロユリなどが可憐に咲く様子が見られます。また、別山や南竜山荘方面の開けた眺望を楽しみながら、気持ちのいい山歩きができることでも人気です。運が良ければ、黄色いクロユリを見ることができるかも。
④ 山頂周辺<室堂・お池巡り>:中・上級者向け(7月中旬~8月上旬頃)



室堂から山頂までの間には、白山を象徴するクロユリがあちらこちらに小さな群れを成したり、ビタミンカラーのクルマユリがまるでチアガールのようにパワーをチャージしてくれたりと、様々なお花が咲き誇ります。山頂周囲のお池巡りを歩いてみれば、短い夏を謳歌する小さな花々がいっぱい! 白色のイワツメクサやアオノツガザクラ、紫色のイワギキョウやミヤマリンドウなどなど…、もう書ききれません。
⑤ お花松原:上級者・健脚者向け(8月上旬頃)


お花好きなら一度は訪れてみたいのが、お花松原。室堂から中宮道を3キロほど進んだところにあり、大汝峰分岐から標高300mほど下る(戻りはその分登り返す)ので、覚悟を持って臨みましょう。お花松原に近づくと何だか妙な匂いが…、その正体はクロユリ! 大群生地であるが故に、辺り一面クロユリの匂いで覆われるのです。ハクサンコザクラも緩やかな斜面を埋め尽くすかのように咲き誇り、まさにお花の楽園! 室堂などで1泊以上宿泊し、ゆっくりと楽しむことをおすすめします。
観光新道を歩いてみた!

白山のお花シーズン真っ只中の7月下旬、実際に観光新道から登ってみることにしました。観光新道は、砂防新道と同じく別当出合をスタートしますが、スタート直後の吊橋を渡る手前で左方向に進みます。

そこから別当坂分岐まで標準コースタイムで約1時間20分、きつい急登をひたすら登ります。ただ、朝の涼しい時間に登り始めたので、比較的スムーズに登ることができました。夏場は暑くなる前にこの坂を通過できる計画が良さそうです。

急登ですが、草は刈り払われ、石段もきれいに敷かれるなど、しっかりと整備されているので安心。樹林帯を抜けて振り向けば、別山の雄々しい姿が。ここまで来れば、別当坂分岐まであともう少し。

ようやく別当坂分岐に到着。この先しばらくは、小さなアップダウンを繰り返す、緩やかな登りの尾根道が続きます。急登とはオサラバじゃ!

この尾根道、巨岩の仙人窟をくぐったり、白山釈迦岳方向の眺めもきれいだったりするので、意外と楽しく歩くことができました。別当坂分岐から殿ヶ池避難小屋までは、標準コースタイム約1時間40分。この先少し標高を上げることになるので、殿ヶ池避難小屋でしっかり休憩を取りました。

殿ヶ池避難小屋を出るとだんだんお花が増えていき、テンションアップ! 振り返ると、さっきまでいた避難小屋の赤い屋根が下の方に小さく見えます。

来たー!馬のたてがみ! お花畑はここからが本番。

いろんなお花が出てきて、他の登山客からも歓声が聞こえます。聞けば、九州から来られたとのこと。「すごかー!」、「きれいかー!」の声が止まりません。白山のお花を一度見てみたかったそうです。

左右をお花に囲まれたこんな小径も通ります。文字通り、花道!

上の方にいる人が、お花畑に降り立った小人のよう。

紫色の大きなお花はタカネマツムシソウ、ピンクのシュワシュワはシモツケソウ、シュっと伸びているのはイブキトラノオ…、いろんなお花が競い合うように咲いています。この感動は、写真じゃ伝わらないな。

お花が多いのでハチも忙しそう。人に構っている場合ではなさそうです。

ニッコウキスゲの黄色と草原の緑、青空のコントラストが「the 夏!」って感じ。 殿ヶ池避難小屋からここまでの間、結構登ってきましたが、お花を愛でながら歩いたので、キツさを感じる暇がありませんでした。恐るべし、お花畑パワー!


この後、観光新道は黒ボコ岩で砂防新道と合流。そこから弥陀ヶ原を歩き、室堂へと向かいました。室堂ビジターセンターの掲示板には、お花の名前と咲いている場所の一覧があったので、見てきたお花の復習を。ふむふむ、勉強になるなぁ。


御前峰に無事登頂。帰りは砂防新道で下り、日帰りの白山登山を終えました。砂防新道のお花もとてもきれいでした。
登山前の準備ガイド(服装・持ち物)

夏の日帰り登山は「涼しく身軽に!」をモットーにしている私は、半そで・ショートパンツが基本。ショートパンツは、登りの腿上げが格段に楽になるのと、体温調節の面から、夏場は譲れません。でも、肌の露出はNG。日焼けは肌を痛める上に体力も消耗するので、可能な限り肌を覆うようにしています。首には最近流行りのスポーツ手ぬぐいを。手ぬぐいを濡らして首に巻くと火照った体がクールダウンするし、けがをした場合には、患部の固定や止血にも使えます。

日帰り装備は、ストック、ザック(16L)、雨具、細々したものは非常用ツェルト、非常食、充電器とコード、ヘッドランプ、保温用アルミシート、携帯トイレ、薬などの救急用品、さっと羽織れるウィンドシェルなどが基本。この他に、この日はおにぎりとパンを2個ずつ、漬物、ゼリー、スイカ、お菓子、水分、ウエストポーチに財布とケータイを入れて身に着けました。

この日の水分量は計2L弱。砂防新道なら途中で水を補給できるのですが、観光新道には水場がないので、室堂までの水分を持つ必要があります。ただ、たくさん持てば歩くのがきつくなるので、自分に合った水分量を知ることも重要。私が常時携行するのは、水、スポーツドリンク、アイスコーヒー、お茶など。水は使わないことも多いですが、傷ができた際の洗浄などに使うので必携。コーヒーとお茶はパンやご飯のお供に、またスポーツドリンクに飽きた時の口直しにも最適です。
夏の白山で、お花めぐりハイクを楽しもう!

夏の白山は、まさにお花の宝庫! お花と戯れたい人は、ぜひ登ってほしいと思いました。そして、観光新道のお花畑は、噂通りすごかった! そんな観光新道も歩いてほしいのですが、いくつか課題があります。そこで、観光新道を歩く際のメリットとデメリットをまとめてみました。
観光新道のメリット○ | 観光新道のデメリット× |
・最初は急登だが、その後は尾根道歩きが多い(急登は涼しい時間帯に登ってしまうのがベスト)。 ・馬のたてがみ辺りのお花畑が素晴らしい! ・お花に見とれている間に、後半の坂道を登ることができる。 | ・トイレは使いづらそうな所が1ヶ所(砂防新道にはちゃんとしたトイレが2ヶ所あり)。 ・水場がない(砂防新道には3ヶ所あり)。 ・下りで利用する場合、最後の下り坂まで体力や足の筋力を温存しておく必要がある。 |

これらを踏まえると、体力がある人や白山登山に慣れた人は、観光新道を歩いてみてほしいと思いました。その際も、登りで使う方が理想的なように思います。体調を整え、睡眠時間をしっかり取った上で涼しい時間にスタートし、16時までに下山できるような計画を立ててみましょう。その計画で無理があると思ったら宿泊を伴う計画に変更し、ゆっくりとお花見登山を楽しんだ方がよさそうです。ナイトハイクは危険なので控えて下さいね。