地元ライター記事

2025.12.22

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御母衣ダムの見どころ完全ガイド|何県にある?桜・天端散策・沈んだ村の歴史【岐阜・白川村】


白川郷へ行くなら、合掌造り集落だけでなく白川郷周辺の観光スポットにも目を向けてみませんか。世界遺産のほど近くには、かつて村が沈んだ歴史を持つ御母衣ダムや、春には可憐に咲く荘川桜、昔の暮らしを今に伝える旧遠山家住宅(国指定重要文化財)など、まだ知られていない魅力が広がっています。
本記事では、白川郷の近くで楽しめる穴場観光とともに、ダム建設にまつわる物語や地域に残る文化を、旅の目線でやさしく紐解いていきます。

御母衣ダムはどこにある?アクセスと基本情報

御母衣ダムは岐阜県大野郡白川村にあります。東海北陸自動車道の白川郷ICからは車で30分ほどですが、観光シーズンは特に渋滞にハマってしまうと数時間身動きが取れなくなることも。そんな時は一つ手前の荘川ICからなら国道158号線〜国道156号線経由で20分ほどで行けるので、こちらのルートがオススメです◎

©石川県観光連盟:泰澄大師像

ちなみに「御母衣(読み方:みぼろ)」という名前の由来には諸説ありますが、地元の“ぐるっと白山”としては、白山を開いた泰澄大師が大切な衣を忘れて立ち去り、のちに母がそれを取りに戻ったという伝承を推したいところ。その土地に残る物語を知ると、不思議とその景色を自分の目で確かめたくなりませんか。

御母衣ダムの見どころ|天端を歩けるダム体験

御母衣ダムは、高さ131m、幅405mにわたって築き上げられた、大規模なロックフィルダムとしては日本初のダムです。完成時はその巨大さから「20世紀のピラミッド」と形容されたほど。その規模は当時東洋一を誇った世界有数のダムです。ここで作られた21万5千キロワットの電力は関西方面に送られています。
ロックフィルダムは天然の土砂や岩石を使用して築造されるため、コンクリートダムと比較して低コストで安全性が高いというのが特徴で、地盤が弱い場所でも大規模なダムが建設可能なんだそうです。

御母衣ダムの天端。想像以上に幅が広い!

御母衣ダムがある庄川水系は積雪量や降雨量が多く豊富な水量に恵まれ、標高の高い山から日本海へ一気に流れ落ちる急な勾配という、水力発電に適した条件を兼ね備えています。そのため戦前から多くの水力発電所が開発されていました。中でも大貯水地を作ることができる御母衣は戦後復興期には大きな期待を集め、大規模水力発電所の先駆けとなったのです。

そしてなんと、この御母衣ダムの天端にはトンネルとトンネルの間から出られちゃいます!

場所が分かりづらいため、「知る人ぞ知る」特別感がありますね。
※但し、車は数台しか停められず出入り口がトンネル間という事もあり、事故防止のため特に駐車場の看板や案内は出ていません。行かれる際には十分にお気をつけください。

御母衣ダム
住所岐阜県大野郡白川村大字牧
管理所電話番号057569-5-2311(電源開発(株)御母衣電力所)

ダムの底に沈んだ村と合掌造り

今では豊富な水をたたえている御母衣湖ですが、ダム建設に伴い174世帯230戸が水没し、約1200人が移転を余儀なくされたという事を忘れてはいけません。

住民による反対運動

昭和27年(1952)御母衣ダム・発電所の建設が発表されると、村人の約8割が会員となって「御母衣ダム絶対反対期成同盟死守会」が結成されました。かつて米の収穫がほとんど見込まれなかった飛騨国において、この地域は貴重な穀倉地帯であり、かつ木材運搬などで豊かな土地だったからです。
開発地点は決定したものの用地交渉には困難を極め、8年という年月がかかりました。そして昭和31年に提示された「幸福の覚書」をきっかけとし、反対運動に終止符が打たれました。

幸福の覚書
MIBOROダムサイドパークの展示より

国指定重要文化財 旧遠山家住宅

白川村には言わずと知れた世界遺産の白川郷合掌集落がありますが、こちらの旧遠山家住宅でも合掌造り文化を伝え続けています。
昭和10年(1935)、ブルーノ・タウトが白川村御母衣に訪れ、遠山家を調査しました。彼は合掌造りを客観的に評価した初めてのドイツの建築家です。

受付をしたら最初に紹介映像を見られます

「構造は極めて論理的かつ合理的で、日本ではまったく例外に属するものだ。屋根裏が4層にもなっている合掌屋根はドイツの家屋そっくりである」
当時の世界を代表する建築家が合掌造りを評価したことで、合掌造りは世界に広く知られるようになっていきました。

急な階段を上り2階に行くと合掌造りの構造を間近で見ることができ、当時の生活には欠かせなかった道具類の展示もされており思わず見入っちゃいますよ。

そして彼の活動は合掌民家が持つ文化的価値を再認識するきっかけとなり、今でも多くの人に愛されています。彼の視点から見る合掌民家はそのデザインだけでなく、地域文化と住民の生活を映し出す貴重な存在なんです。

旧遠山家住宅
住所501-5506岐阜県大野郡白川村御母衣125
電話番号05769-5-2062
営業時間4月〜11月/9時〜16時
12月〜3月/10時〜16時
休館日:毎週水曜(祝日の場合は前日休)
年末年始(12月28日〜翌年1月3日)
入館料高校生以上 300円(団体 240円)
小中学生 150円(団体 120円)
※団体は25名以上
駐車場無料駐車場有
アクセス[東海北陸自動車道]荘川ICより国道158号線〜156号線経由
公式サイトhttps://shirakawa-go.gr.jp/active/6/
関連ブログ白川郷周辺の穴場観光|旧遠山家住宅の合掌造りで体験&郷土料理ランチ

奇跡の二本「荘川桜」と春の絶景

御母衣ダムの建設により水没が決定した地区にあった光輪寺と照蓮寺の庭に樹齢450年(当時)と言われる老桜(アズマヒガンザクラ)があり、地元住民の心の拠り所として大切にされていました。この老桜を守るため、電源開発の初代総裁・高碕達之助が「なんとかしてこの2本の桜を救うことができないか」と強く願い、桜博士と呼ばれた笹部新太郎や造園家の丹羽政光らの協力を得て、「奇跡」と称されるほどの難工事を成し遂げたのです。

移植後「荘川桜」と名付けられ、村の一部が水没してから10年の昭和45年(1970)。2本の老桜は助けた人たちの愛情に応え、年々4月上旬から5月上旬にかけて美しい花を咲かせるようになりました。

ダムに沈むはずだった老桜が移植され、奇跡的に蘇ったその生命力に感動した旧国鉄バスの車掌・佐藤良二氏。名古屋と金沢を結ぶバス路線沿いにその生涯をかけて2,000本もの桜を植樹したんです。かつて「太平洋と日本海を桜で結ぼう」というタイトルで中学校の教科書にも収録されていたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

今では荘川桜の二世も!

彼の意思は「さくら道国際ネイチャーラン」という毎年春に行われる名古屋城から兼六園までの約258kmを一昼夜走るというイベントに受け継がれていましたが、1994年からコロナ禍を経て2024年まで開催され、30年の歴史に幕を下ろしました。

荘川桜の見頃は例年4月下旬から5月のGWです。駐車場は無料でトイレも完備。第一駐車場、第二駐車場がありますが桜の見頃の時期には多くの車や人で賑わいます。お手洗いはとても混雑するので、近隣の道の駅やドライブインで済ませてからのお花見がおすすめです。

MIBOROダムサイドパークで学ぶ歴史と技術

さて、ここからは絶景の観光だけでなく大人も子ども楽しく学べる社会見学です!
今回訪れたコチラ、MIBOROダムサイドパーク。荘白川地域の観光情報、ダム建設の歴史や荘川桜誕生にまつわるドラマ、発電所の仕組み等を紹介した色々な展示を楽しむことができる施設です。

御母衣電力館はダムの立体模型や資料から電力供給の仕組みをわかりやすく解説してくれますよ。

ダム湖の中を潜水艦に乗って冒険する映像アトラクション「サブマリンフィッシュ」や、発電専用ダムである御母衣ダムがどういう経緯で造られたか、記録動画や展示パネルなどで知ることがきます。

荘川桜の移植物語もパネルやオリジナルの映像で紹介しています。

「館長のガラクタ箱」には見た事のない不思議な道具が入っていました。お仕事に従事されてる方でないとその使い方も用途もまったくわからない!けど、これらの道具を使って多くの方々がお仕事をされてきたのだと思うと、今の便利な生活を送れている日常に感謝するばかりです。

そして御母衣電力館の反対側には荘川桜記念館があります。(2回のテラスからも通路を経て行き来可能)

荘川桜記念館では四季折々の素敵な荘川桜の写真が展示されています。写真が趣味の私もじっくり見入ってしまいました。

2階のテラスや1階のベンチからは、正面に圧巻の御母衣ダムが望めます。資料館でその建設の歴史や技術に触れた後に見るロックフィルダムの景色は何だかとても感慨深く、一味違って見えますね。ブログでは先にダムの天端を紹介していますが、個人的にはMIBOROダムサイドパークで学んだ後に天端に行ってみることをオススメしたいです。人間はこれだけの偉業を成し遂げられるんだというスケールの大きさを肌で実感できますよ!

そしてもう一つ。こちらでは受付にてダムカードを配布しています。訪れた記念に、後から旅の思い出にもなりますね◎

MIBOROダムサイドパーク
住所501-5505岐阜県大野郡白川村大字牧140-1
電話番号05769-5-2012
営業時間9時〜16時
定休日:毎週水曜
※但しゴールデンウィーク(4月29日〜5月5日)夏休み期間(7月21日〜8月31日)
紅葉期間(10月10日〜11月10日)は無休
冬季閉鎖(12月16日〜3月14日)
入館料無料
駐車場無料駐車場有
アクセス[東海北陸自動車道]荘川ICより国道158号線〜国道156号線経由
公式サイトhttps://www.jpower.co.jp/learn/facilities/miboro.html

モデルコース案|御母衣ダムと周辺観光を巡る半日旅

ここまで紹介してきた御母衣ダムや荘川桜、旧遠山家などは全て国道沿いで立ち寄りやすい場所ばかりです。白川郷の合掌集落に向かう前に、のんびりと周辺観光なんていうのも気分が変わっていいですよ♪

タイムスケジュール

10:00 荘川IC→ 10:20 御母衣ダム展望&天端散策
11:00 MIBOROダムサイドパーク見学
12:15 旧遠山家でランチ&文化体験(ごはんプロジェクト)
13:30 白川郷方面へ
※春はダムに行く前に荘川桜でお花見の時間をぜひ!

※旧遠山家から白川郷合掌集落までは車で約15分ほどです。
・白川郷への最終入場時間は一般的に16:30
・集落の散策、見学の平均所要時間は2〜3時間
荘川ICからスタートしても効率よく回る事ができます。

まとめ|御母衣ダムで自然と歴史を体感する旅


いかがでしたか?白川村を一歩踏み込んでその魅力を探ってみると、ただのダム観光だけでなく深い歴史や文化に触れることができます。ダムの建設に伴う住民たちの反対運動や、荘川桜の奇跡的な移植、さらには合掌民家など、静かな山間の村はSNS映えする美しい景色だけでなく、過去の人々の思いも感じられる場所です。
白川郷には何度も訪れた方や、ドライブが好きな方、普段とは少し違った体験をしてみたい旅行好きの方に、ぜひ体感してほしいおすすめのコースです。私たちの生活に欠かせない電力を生み出すこの地で、歴史に思いを馳せながら自然を楽しむひと時は、とても素敵な体験になると思います◎

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