地元ライター記事

2025.12.04

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白川郷周辺の穴場観光|旧遠山家住宅の合掌造りで体験&郷土料理ランチ

世界遺産・白川郷合掌造り集落[荻町]から車でわずか20分。観光地の喧騒を離れ、静かな山里にたたずむ国指定重要文化財「旧遠山家住宅」。
合掌造りの家で、石臼を回して大豆をすりつぶす郷土料理「すったて汁」づくりを体験し、囲炉裏のある空間で自然食の弁当を味わう――。
昔ながらの暮らしと食を通して、“もうひとつの白川郷”に出会える場所です。


白川郷観光の穴場!国指定重要文化財「旧遠山家住宅」とは

世界遺産・白川郷合掌造り集落[荻町]から車で約20分。
観光客でにぎわう中心部を離れると、山あいにひっそりとたたずむ合掌造りの名家「旧遠山家住宅」が現れます。1827年に建てられたこの家は、白川郷を代表する名主の住宅であり、和田家住宅と並ぶ国指定重要文化財

三階建ての堂々とした造りは、豪雪地帯の知恵と職人技の結晶です。太い梁が幾重にも組まれた屋根裏は、かつて養蚕に使われていた場所。家族総出で蚕を育て、絹糸を生産していた当時の営みが今も息づくようです。建物の内部では、かつての暮らしを紹介するパネル展示や7分間の映像が上映され、囲炉裏のある生活空間を見学できます。
世界遺産の喧騒を離れ、雪国の知恵が宿る“もうひとつの白川郷”に出会える、まさに穴場の文化財です。

 旧遠山家住宅の見どころ|合掌造りの建築美と落ち着いた空間

旧遠山家住宅の魅力は、なんといっても合掌造りの構造美
太く力強い梁が三角に組まれた屋根裏は、木と縄だけで支えられたとは思えないほど精巧です。階段を上ると、2階・3階の広い空間が現れ、かつて養蚕に使われていた様子が目に浮かびます。日の光が小窓から差し込み、煙の残り香がふわりと混じる――そんな瞬間に、百年以上続いた暮らしのぬくもりを感じます。

1階には囲炉裏があり、ゆらぐ炎が静かな空間をやさしく照らします。煙が屋根へと抜ける仕組みも、この地域の雪国の知恵。冬には火を囲みながら、ゆっくりと写真を撮る人の姿も多く見られます。

この建物は、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトにも高く評価されたことで知られています。彼は1930年代に日本各地を訪れ、白川郷の合掌造りを「日本の建築精神を象徴する家」と称賛しました。無駄のない機能美と自然素材の調和が、今も訪れる人を魅了します。

また、旧遠山家住宅には大家族ならではの間取りが残されています。
それぞれの部屋には名前と役割があり、暮らしのリズムが空間に刻まれていました。
家族の調理や食事の場であった「ダイドコ」、ひき臼を置いて穀物を粉にしたり籾摺りを行った「ウスナガ」、家長が休む「オクノチョウダ」、女性たちの寝室である「チョウダ」、そして賓客を迎える「オクノデイ」など。
どの部屋も、当時の人々が共に生き、働き、支え合っていた温かな生活の証です。

観光客で混み合う荻町集落とは違い、ここでは時間がゆっくりと流れます。
人の少ない静かな空間で、木の軋む音や囲炉裏のぬくもりを感じながら、心ゆくまで“白川郷の原風景”を観察できます。

すったて汁づくり体験レポート

「すったて汁」とは、大豆をふやかして茹で、石臼ですってつくる白川郷の郷土料理。
かつては家族が集まる日の“ハレの日のごちそう”として親しまれていたそうです。
回す人、豆を入れる人、詰まりを直す人――三人一組で交代しながら、一日かけて仕上げる。
そんな手仕事の風景を、受付のスタッフさんが丁寧に教えてくれました。

現代では、深山(みやま)豆腐店の「すったて」が使われ、誰でも気軽に楽しめるようになっています。
今回体験したのは、濃いめの味噌汁に大豆を石うすでひいたすったてペーストを加えて作る「すったて汁」。できあがったすったて汁は、濃厚でまろやかなポタージュのよう。
七味を少し加えると、豆の旨みにぴりっとした香りが重なり、体の芯から温まります。

12月から3月までは常時受付、それ以外の季節は予約制。
手を動かすだけでなく、地元に伝わる“丁寧に暮らす知恵”を感じられる貴重なひとときです。

実施日通年(12~3月以外は要予約)
受付時間10:00〜15:00
参加人数一組2〜15名以上(7日以上前に連絡)
体験料一鍋500g 1000円(約2~3人分)
問い合わせ先教育委員会 05769-5-2180 

『遠山家ごはんプロジェクト』ランチ体験

合掌造りの家で、静かにいただく一膳。
旧遠山家住宅の「オクノデイ(賓客の間)」に膳が並び、ゆったりと食の時間がはじまります。
遠山家ごはんプロジェクトでは、地元の宿や飲食店が手がけた特製弁当を、
国指定重要文化財の合掌造り住宅の中で味わうことができます。
世界遺産・白川郷の喧騒を離れ、“暮らしの家”で食を楽しむ——そんな贅沢な体験です。

この日は、遠山家の近くにあるホステル「サルガバンバ」のお弁当をいただきました。
発酵食をベースに、旬の野菜や地元の食材を使ったおかずが少しずつ並び、
目にもやさしく、ひと口ごとに素材の力を感じます。
丁寧に味つけされた一品一品が、どこか懐かしくて、どこまでもやさしい。
静けさの中でゆっくりと味わうと、時間までもゆるやかに流れていくようでした。

食事は、祝い事や報恩講などの法要で用いられてきた高膳(たかぜん)で提供されます。かつて白川村では、ハレの日に客人をもてなすとき、この高膳にご馳走を並べて心を尽くしていたと言います。旧遠山家住宅でのランチ体験は、そんな”もてなしの文化”を今に伝えるもの。村人の敬意とあたたかさを感じられます。

「遠山家ごはんプロジェクト」のランチ体験は、
白川郷観光協会の公式サイトから事前予約制で申し込みができます。
お弁当の内容は時期や提携店によって変わり、白川郷ならではの味が楽しめます。
食事とあわせて旧遠山家住宅の見学も含まれており、観光というより“暮らしを体感する時間”として、旅の記憶に残る体験です。

実施日通年(年末年始と水曜日休館)
予約1週間前までの受付
問い合わせ先(一社)白川郷観光協会 05769-6-1013
公式ホームページhttps://shirakawa-go.gr.jp/tours/11/

アクセス・駐車場・周辺観光

旧遠山家住宅は、世界遺産・白川郷合掌造り集落[荻町]から車で約20分。

荘川ICから国道156号線を北へ進むルートが便利で、観光地の中心部を避けながら、山里の穏やかな風景を楽しみながら向かうことができます。

敷地内には無料駐車場(普通車約20台)があり、混雑を気にせずゆっくりと見学・体験ができます。
荻町集落とは対照的に観光客が少ないため、写真撮影や建物の観察にも最適な“静かな白川郷”を体感できる場所です。

近隣には、春の「荘川桜」や四季を映す「御母衣ダム」、疲れを癒す温泉施設「大白川温泉しらみずの湯」など、自然と文化を満喫できるスポットも点在しています。

名称旧遠山家住宅(国指定重要文化財)
住所〒501-5506 岐阜県大野郡白川村御母衣125
電話番号05769-5-2062
入館料高校生以上 300円 (団体240円)
小・中学生 150円(団体120円)
※団体は25名以上
開館時間1週間前までの受付
休館日毎週水曜日、年末年始(12月28日~1月3日)
観光協会ホームページhttps://shirakawa-go.gr.jp/active/6/

 混雑を避けて白川村の“本当の魅力”に出会う旅へ

世界遺産・白川郷というと、荻町の合掌造り集落を思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれど、少し足をのばして訪れる旧遠山家住宅には、観光では味わえない“暮らしの記憶”が残っています。

ゆっくりと歩き、囲炉裏の前に座り、手のひらに温かさを感じる。
その一つひとつの体験が、どこか懐かしく、心の奥を静かに満たしてくれます。
ここには、合掌造りの家を「生きた場所」として守り続けてきた人々の想いが流れていました。

喧騒を離れ、自然とともに息づく白川郷。
その本当の魅力は、きっとこうした“静かな時間”の中にあるのだと思います。
旅の途中で少し立ち止まり、五感で感じる白川村のぬくもりに、あなたも出会ってみませんか。

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